10月21日、笠間の陶芸美術館で。
この二人には、魯山人の書の師匠は岡本太郎の祖父であり、魯山人は太郎幼時の岡本家に住み込んでいたという接点があったことを本展で初めて知った。その接点を手がかりに二人の作品を見ていくと、何か新しい発見があるだろうというのが本展の企画意図なのだろう。
ぼくにとっては、発見はあった。ただし、企画意図とはずれているのかもしれない。
第一室は魯山人が中心。中に、岡本太郎主催の茶会の様子なども展示されている。
魯山人については、こんなにいいものだったのだと改めて思った。一つ一つの作品の完成度、質の高さ、ということとは別の意味でなのだが。例えば、何点か出ていた書と絵による屏風などは、書としてどうなのかは自分には分からないし、絵も俳味の強いもので、見る者として「芸術作品」に対峙する構えにはならない。しかし、これの置かれた部屋で酒を飲んだらさぞ楽しかろうと思える点では天下一品なのだ。食器、特に焼き物も同様で、これに刺身を盛ったら映えるだろう、これで煮物を食べたら旨かろう、というものばかり。花器も、その作品のみで鑑賞するよりは、花を生けてこそというものなのだ。
つまり、魯山人の作品は、茶事や会食の場、人と人との出会いの場という空間の一構成要素として捉えた時、その抜群の価値が現れるものであると思われた。
これは、本展の後、常設展で見た板谷波山が、作品のみで全きものとしてあり、そこに花を活けることも煮物を盛ることもためらわれるのとは際立って異なるものだ。
写真や資料で示された岡本太郎の茶会の様子は面白かった。茶会の本質は、そこに集う人々の持つ様々な知性や感性が触れ合って起こす化学反応にこそあり、どんな化学反応が生まれるかはメンバーの選考に拠る所が大きいのだなということが、まず思ったこと。道具立てを含む場の仕立ては、その化学反応のための触媒であって、触媒が違えば客のどこが刺激されるかが違うから、化学反応も異なってくる。湯を釜で沸かさず薬缶で沸かした太郎の意図も、そう考えて見れば、常ならぬ化学反応を起こしただろうと理解できる。
しかし、第二室の岡本太郎の作品には、共感するところが少なかった。どころか、違和感のようなものを覚えた。描かれている要素同士が一つの全体を構成するために共鳴する、共振するということがない作品なのだ。例えば、原色で描かれた炎のようなものの下に黒い太い蛇のようなモチーフを描いた作品。炎はたとえば宇宙の原初のエネルギー、その爆発とも見えるのだが、そのカオス的なものと、蛇的形態が共振しない。全く別個の無関係な存在であって、この二つが一つの空間に共存することなどあり得ないと感じてしまう。
別の、壁画のような大きな作品においても、目の化け物のような形態が他の要素と響きあわない。
絵画とは、異なる要素を統一的な全体として構築するものという観念をもって臨むと、裏切られるのだ。
恐らく岡本はこの違和感をこそ表現しようとしたのだろうとは思う。
全く異質なものを目の前に一緒に放り出してみせるということなら、例えば川俣正がその典型であるように、現代アートの一特性といえるのかもしれない。しかし、川俣と岡本はあきらかに違う。
川俣が街の一角に工事現場で用いるような板をはりめぐらすとき、この板は、街の持っていた一面を照射するのである。乱雑に貼り付けられた板の質感を感じながら石造りの建物、それらが構成する街の一角を見る時、普段ほとんど意識されていなかったこの街の質感、特性が浮かび上がり、強く感得されるのである。
これに対し岡本が原初の爆発のごとき色の隣りに描いた黒い蛇状のものは、爆発の意味を浮かび上がらせることはないし、原初の爆発によって黒い蛇の意味が見えてくることもない。無関係なままなのである。
見る者の眼力不足というだけのことなのかも知れないし、全く異なる観点から見れば大きな価値があるのかも知れないが、ぼくには、違和感ばかりが強かった。
違和感があまりなく素直に楽しめたのは、書とデザインをミックスしたような作品。夢などの文字をデフォルメし黒で大きく書いた周囲に、様々な色の、文字と同じほどの太さの線を配し、文字はすぐには判別できなくなっている。色と線によるバランスのよい構成であり、そこに勢いも加わるから、悪くない。
一見しては文字が分からないようにしようという企図ゆえに、黒い文字の線と他の色の線を溶け込ませるように全体を描いた、その結果として違和感のないバランスが得られたのだと思う。また、書という、自分の好みだけでは形状を決定しきれない、言ってみれば他律的な構成要素を用いたことが、岡本の意識に多少なりとも枠をはめ、全体の統一性に向かわせたようにも思える。
空間全体を構成する要素として書が生かされた、この点は、魯山人と岡本に共通する。このことが、二人に接点があったことと関係があるかどうかは、本展では読み取れなかった。
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