Friday, June 09, 2006

圧縮(3)

一つの楽曲という、変化に富み、かつ、他の楽曲とは明確に区別される特徴を備えたものを、一つの色で表現しようなどというのは乱暴すぎる発想のように思える。

しかし、考えてみれば、我々の言語は、人間の感情のような複雑なものでさえ、数文字の言葉で表現している。
例えば、「かたじけない」という言葉が表している思いは、この思いを抱く人Aと、その思いの対象となっている人Bとの間に、様々なできごとがあって生まれるものであり、この言葉を聞いた我々は、AとBとの間にあったであろうことを多少なりとも想像し得る。
また、この言葉を用いるということ自体から、我々はAについて何がしかのことを知り得る(Aは幼児ではない、Aは暴君ではない、等)。
たった5文字に圧縮された言葉で、そのような情報を提供できるということである。
「かたじけない」という5文字の代わりに、ある特定の色を用いることは、情報の圧縮という点ではそれほど差がない。
人間の感情を色で表現することが可能ならば、楽曲を色で表現することも可能だろう。

色の方が優れている点もある。
例えば、「かたじけない」と「申し訳ない」。この二つの言葉が使われる状況は、異なるものではあるが、「かたじけない」と「憎い」よりは類似性の高い状況だろう。二つの言葉の類似性(使われる状況の類似性と概ね同意だろう)を表現する上で、色は便利だ。色相には、遠近関係があるからだ。
楽曲で言えば、同じ作曲家の曲を表す色は近い色に、また、影響関係の強い作曲家同士の曲も近い色になるような、色の選定ができるはずだ。

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